安藤貞雄「英語の論理・日本語の論理」 pp56ー58 (P56) 第3章 語順の比較 A. SOV言語とVO言語 l.序論  日英語の語順の大きな違いは、 (1)John bought a book. ジョンハ、本ヲ 買ッタ。       V   O        O  V のように、日本語では「目的語+動詞」、英語では「動詞+目的語」とちょうど逆に なる点である。  主語をS、目的語をO、動詞をVで表すなら、これらの要素の語順としては、次の 6つのタイプが論理的に可能である。  (2)a.SVO d.VOS     b.SOV e.OSV     c.VSO f.OVS  しかし、Greenberg(1966)によれば、調査したさまざまな語族にわたる142の言語のうち、d‐fのVOS、OSV、OVSの語順は全然生じないか、きわめてまれである。つまり、どの言語でもOSの語順を避ける傾向がはっきりと看取されるのである。  (1)で分かるように、英語はSVO言語、日本語はSOV言語ということになるが、それぞれのタイプの語順は、世界の言語の中でどの程度に一般的あるいは特殊的なのであろうか。 (P57)  63の言語をサンプルとしたSteele(1978)の調査によれば、基本語順の比率は、次のようになる。  (3)SOV 30(47%)     SVO 20(32%)     VSO 10(16%)     VOS  3 (5%) この表によれば、日本語のようなSOV語順は、全体の47%を占めるもっとも一般的なものであり、英語のようなSVO語順の32%を大きく上回っていることが分かる。それに対して、Steeleの調査した諸言語のうちで、OがSの前にくるVOS語順は、タガログ語、トンガ語、カパンパンガン語の3つ(5%)しか見いだされない。動詞が文頭に起こるVSO言語も、16%と少数派である。そういう次第で、世界の言語の80パーセント近くは、SOVかSVOかのどちらかの語順に属することになる。  さて、OV:VOと語順が鏡像関係をなす言語では、(4)のように、他の統語要素の配列においても体系的な対立を示す傾向がある。  (4)   VO言語     OV言語     a.前置詞+名詞   名詞+後置詞     b.接続詞+文    文+接続詞     c.助動詞+本動詞  本動詞+助動詞     d.名詞+関係節   関係節+名詞  以下、そういう語順の鏡像関係を、日英語において具体的に見てみよう。    <前置詞+名詞> <名詞+後置詞>  (5)a.with  a pen ペン  デ        1 2    2  1     b.by  car 車  デ       1  2  2  1 (P58)    <接続詞+文>   <文+接続詞> (6) a. When John comes   ジョンガ来ル ト      1  2      2  1 b. I think [that he'll go.] [彼ガ来ル ト]思ウ。    1    2     2    1 <助動詞+本動詞> <本動詞+助動詞> (7)He will come. 彼ハ 来ル ダロウ。     1  2     2   1    <名詞+関係節>      く関係節+名詞> (8) the book which John wrote ジョンガ書イタ 本      1   2      2     1  ここまでは、日英語の語順は完全に鏡像関係をなしているが、「属格+名詞」、「指示詞+名詞」、「形容詞+名詞」などの語順では、英語は日本語と同じOV言語の特徴を示す。英語は、典型的なVO言語ではなく、OV言語の特徴もあわせ持っている、ということである。    く属格+名詞>  <属格+名詞> (9)Mary's sister    花子ノ 妹     1  2     1  2    <指示詞+名詞>  <指示詞+名詞> (10)  this man     コノ  男       1  2      1 2    <形容詞+名詞> <形容詞+名詞> (11)white wine    白い ワイン     1  2     1  2