安藤貞雄「英語の論理・日本語の論理」pp119ー120 (P119)        C.アクセントと強勢の比較 l.日本語のアクセント  ひと口に日本語のアクセントと言っても、東京や京都のように、アクセントのある方言もあれば、仙台市や熊本市のように、アクセントのない方言もある。また、アクセントのある方言の場合も、たとえばame(雨)のアクセントは、東京ではアメだが、札幌ではアメであり、中国地方の方言ではクモ(雲)とクモ(蜘妹)、ノリ(糊)とノリ(海苔)にはアクセントの対立があるが、東京方言では、それぞれ、クモ、ノリであって、アクセントの対立はない。  こういう次第で、日本語ではアクセントは音韻的に有意味かと問われるならば、特定の方言体系内ではそうであるが、異なる方言同士ではそうではない、と答えなければならない。以下に、東京方言の現代標準アクセントを記述してみよう。 は研究社の『新和英大辞典』(1974)である。  日本語のアクセントは、英語のような強弱ではなく、高低の関係であるが、これを表すのに片仮名の肩に/「/、/ /をつけて示すことにする。/「/は、そこからあとのモーラが前の部分よりも高く発音され、/ /は、そこまでのモーラがあとの部分よりも高く発音されることを示す。  日本語のアクセントには,「ガ、ノ、ヲ、へ」などの格助詞が平らに続くか、低く続くかによって、大きく、2つの型に分かれる。 (1)A.平板型:格助詞が平らに続く      a.頭高型:「アサ(朝)、「イノチ(命)、「コーモリ        (こうもり)、「カゲボウ シ(影法師)      b。中高型:コ「コロ(心)、ア「サ ガオ(朝顔)、ヤ「マ   ザ クラ(山桜)、カ「ラカ サ(唐傘) (P120)      c。尾高型:ウ「シ(牛)、ウ「サギ(兎)、ト「モダチ(友達)、        タ「マゴヤキ(卵焼き)、ハ「ナ(鼻)  B.下降型:語末が高く発音され、助詞が低く続くもの        イ「ケ(池)、ハ「ナ(花)、カ「ワ(川)、オ「トコ (男)、        オ「トウト (弟) <下降型>には,エ (絵)、ヒ (火)のような1音節の単語も含まれる。 <平板型>のハ「ナ(鼻)と<下降型>のハ「ナ(花)とは、語のレべルではアクセントの区別がつかないが、文の中で助詞を伴って使用されると、アクセントの違いが顕在化する。 (2)a.ハナ(花)ヲ手折ル。    b.不満デハナ(鼻)ヲ鳴ラス。 (2)aでは、「ナ」が高く発音され、「ヲ」が低く発音されるのに対して、(2)bの場合は、「ナ」が高く発音され、それが平らに「ヲ」に続いている。  エ(絵)と(柄)エ 、ヒ(日)とヒ (火)のような場合も、文中に生ずると後者の類にアクセント核があるのが分かる。 (3)a.エ(柄)ヲ付ケル。    b。エ(絵)ヲ描ク。  どうしてこういうことになるのかと言えば、アクセントの高低は相対的なものであるから、1音節語の場合は、文中でなければアクセント核の存在が感じられないからである。